S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「朝早くにごめんなさい。おじさまと直接会って話がしたいの」
『そうか。わかった。それじゃ……』


廉太郎が指定した待ち合わせ場所をメモし、通話を切った菜乃花は早速実家を後にした。

ようやく動き出した街は、土曜日のせいか平日よりもどこか時間がゆっくり。その流れにさえ乗り遅れているように感じながら、菜乃花は指定された店に足を踏み入れた。

早朝からオープンしている駅前のコーヒーショップは、まだ人もまばらで廉太郎の姿もない。カウンターでホットカフェラテを受け取り、一番奥のテーブルに座る。

(きっと違う。なにかの間違い。私と朋くんが兄妹なんて絶対にあり得ない話よ)

写真だけで決めつけるのは早すぎる。廉太郎もなにか勘違いしているのではないか。
そうに違いないと、無理やり自分を納得させる。そうでもしないと、じっと座っているのも辛いほど激しく動揺していた。

スティックシュガーを一本入れてくるくるかき混ぜていたら、廉太郎が現れた。


「菜乃花ちゃん、お待たせ」
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