S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

手にしていたホットコーヒーのカップをテーブルに置き、菜乃花の向かいに腰を下ろす。

菜乃花の父よりふたつ年上の廉太郎は穏やかな顔立ちこそ似ているが、スリムな信吾に比べたら大柄な体格だ。ここの小さな椅子では少し窮屈そうである。


「おじさま、こんな早い時間にごめんね」
「いや、それはいいけど。例の話だろう?」


早朝から呼び出されたうえ、昨日の今日なら廉太郎が簡単に察して当然だ。
菜乃花はバッグの中から、先ほどの写真を取り出してテーブルの上を滑らせた。


「これ、実家で見つけたの……」


廉太郎は目を見張り、それを手に取ってまじまじと凝視する。


「こんなものが残っていたのか」


引き出しにはほかに写真はなく、年賀状の束の下に一枚だけ差し込まれていた。信吾が亡くなった際に一度開けたような記憶はあるが、そのときには気づかなかったようだ。
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