S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

それも、菜乃花の本当の父親だと知りながら。普通の神経では考えられない。


「私もそのあたりは理解に苦しむんだがね……」


両家でお茶会や食事会は頻繁だったし、お互いの家にしょっちゅう出入りしていたのに。
ふたりはいったいどういう気持ちだったのだろう。まったくわからない。


「それなら、おじさまはどうして私が朋くんと一緒に暮らすと決まったときに話してくれなかったの?」


そのときに打ち明けてくれれば、少なくとも傷は浅くて済んだのに。
なぜ今なのか。


「いやあ、それを言われると私もつらいんだがね……。ほら、ふたりは本当の兄と妹なわけだし、八歳も離れていれば間違いは起こらないだろうと楽観視していたんだ」


廉太郎は微かに目を泳がせ、必死に弁明する。罪悪感で喉が渇くのか、冷めたコーヒーを一気に飲み干し、それだけでは足らずに水のグラスも空にした。

母の不倫と自分の出生の秘密、そして朋久と兄妹だと言う。
< 218 / 300 >

この作品をシェア

pagetop