S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

目を開けているのに、いきなり真っ暗闇の穴にでも突き落とされた感覚だった。

母の不倫だけでなく、朋久と菜乃花が兄妹。
それが事実だとしたら、あまりにもむご過ぎる。


「おじさま、お願い、違うと言って」


どうしても認めたくなくて、頭で考えるより早く口が動く。
廉太郎がひと言〝違う〟と言ってくれれば、それですべて忘れられるから。ジョークのひとつだと笑い飛ばして終わりにできる。


「菜乃花ちゃん、そこまで信じられないのならDNA鑑定をしてみるか?」
「……え?」


願いとは違う方向に話が転がっていく。DNA鑑定とはただごとではない。


「はっきりとした結果がないと信じられないんだろう? それなら鑑定は手っ取り早いし確実だ」
「DNA鑑定……」


自分とはまったく関わりのないものだと他人事のように考えていた存在が、突然目の前まで迫ってきた。
廉太郎の言う通り、その検査を受ければ真偽がはっきりする。
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