S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「こんな時間に寝たら、夜眠れなくなるぞ」
「子どもじゃないんだから」
「あぁ子どもだからこそ、いくらでも眠れるか」
いつもの調子でからかわれたのに軽く言い返せず言葉に詰まる。
頭の中を驚愕の事態が占拠しているせいで朋久との会話に集中できないし、笑って返せるような心理状態でもない。
「菜乃?」
「あ、ごめん。すぐになにか作るね」
立ち上がりかけた菜乃花の手を掴み、朋久が引き寄せる。
唇が重なる寸でで、菜乃花は咄嗟に顔を逸らした。
「……あ、あのね、ちょっと風邪気味なの。朋くんに移したら大変だし」
朋久が訝しげな表情をしたため、急ごしらえの理由を大慌てで並べる。
「風邪? 熱は?」
朋久が額と額をコツンとぶつける。