S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

*****

自宅マンションで夕食を食べ終え、キッチンで後片づけをしていた菜乃花は、不意に後ろから抱きすくめられた。


「菜乃、まだ体調が悪いのか?」
「あ、ううん、もう大丈夫だよ」
「その割に元気ないな」


ギクッとしてシンクを拭いていた手が止まる。


「そ、そうかな。元気モリモリだよ」


無理に笑顔を作って再び手を動かしたが、朋久に体を反転させられた。


「俺の目を欺けると思ってるのか?」


真っすぐに向けられる視線が痛いのは隠し事をしているせいだろう。目を逸らしたくて堪らないが、ここで逸らしたら嘘を認めるのと同じ。必死に見つめ返した。


「なにかあったんだろう」
「じつは……」
< 229 / 300 >

この作品をシェア

pagetop