S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

耐えきれずに視線を外した。


「なにがあった」
「あのね、研修でちょっとミスっちゃって」


咄嗟に思い出した失敗を引き合いに出す。


「研修でミス? 新人たちの研修か」
「うん。公開フォルダに入れる資料を間違えちゃったの」


これは実際にしでかした失態だ。講義を一時中断して資料を差し替えなければならなかった。


「菜乃がミスるなんて珍しいな」
「朋くん、私のこと買いかぶりすぎだよ」
「いや、総務部の部長がよく褒めてる」
「朋くんの奥さんを悪くは言えないでしょ。お世辞だよ」


次期代表弁護士である朋久の心証を悪くするのは避けたいはずだ。


「そんなわけあるか。菜乃はもっと自信を持っていい。俺が言うんだから間違いない」
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