S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

そうまで言ってもらって、いつまでも謙遜していられない。「ありがと」と目線を上げたら朋久と再び視線が合い、不意に甘い空気が舞い降りた。

先ほどの探るようなものではなく、熱を帯びた眼差しに胸が疼く。

(もしも半分だけでも血が繋がっていたら、溢れるほどのこの想いは罪になるの? 朋くんを愛する気持ちは許されないものなの?)

まるで溺れているよう。息が詰まって苦しい。

鑑定なんてやめておけばよかった。真実なんてうやむやのままでよかった。

(そうすれば、朋くんとずっと一緒にいられたのに――)

無理に明らかにしなくても、それだけで幸せだったはずだから。兄妹の可能性を残していたとしても、事実を知らなければ血の繋がりはないのと一緒だ。


「菜乃」


愛しさを込めて名前を呼ばれ、キスを予感する。

どうか、キスくらいは許して。

そう願うのと同時に、べつの自分がブレーキを掛ける。

――やっぱりダメ。
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