S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「菜乃花ちゃん、開けて」
「……うん」
テーブルの上に出した手が震えて一度封筒を掴み損ねたが、なんとか手に取り封を切った。
中に忍ばせた指先で目を閉じたまま中身を取り出す。この薄い報告書は、菜乃花の一生を変える威力を、確実に持っている。
(――お願い、違うと言って)
耳の奥で反響する心音に押されるようにして目を開けた。
〝公的兄弟姉妹鑑定〟と大きく書かれた表紙をめくり、わからない単語や数字が並んだ表から目を下へ下へと滑らせる。
(嘘、でしょう……)
被験者の名前の下に大きなフォントで書かれた総合評価の欄に目が釘づけになった。
「菜乃花ちゃん、どうだったんだい?」
向かいから首を伸ばした廉太郎に、なにも言わず報告書を広げる。
「……やはりそうだったか」