S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
菜乃花と朋久は、腹違いの兄と妹だったのだ。
完膚なきまでに叩きのめされた感覚だった。
「おじさま、どうしよう。……どうしたらいいの?」
寒くもないのに体が震えて止まらない。自分をかき抱くようにしてもガタガタ打ち震え、頭の中は真っ白。なにも考えられない。
「菜乃花ちゃん、落ち着くんだ」
「そんなの無理」
首を横に何度も振る。こんな事実を前にして落ち着いていられるわけがない。
「菜乃花ちゃん、いいか、よく聞くんだ」
必死に力づけようと廉太郎はテーブルに身を乗り出し、菜乃花をじっと見据えた。
「このまま結婚生活を続けるわけにはいかない」
「……離婚しろって言うの?」
「しないわけにはいかないだろう? キミたちは兄妹なんだ。血が繋がっている。子どもがいないのは幸いしたよ」