S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
〝朋久と離婚〟というワードが頭の中をぐるぐる回る。
子どもの頃から大好きだった彼とやっと結ばれたのに。
「こんなこともあろうかと用意してきたんだ」
廉太郎は先ほどの鑑定結果が入っていたブリーフケースから、べつの封筒を取りだした。
「……これは?」
「離婚届。すぐにも必要になるだろう。早いに越したことはない」
「そんな……」
あまりにも準備が良過ぎて展開についていけない。頭はキャパシティーオーバー。限界をとっくに突破していた。
「これは菜乃花ちゃんのためだ。私だってこんな真似はしたくないよ。だが菜乃花ちゃんが倫理違反を犯しているのに指を咥えてはいられない」
「倫理、違反……」
とてつもなく重い罪を犯しているような響きに胸を圧迫される。見えない力で強く押され、座っているのすらつらい。