S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
この結婚を決めたとき、朋久に本当に好きな女性ができたら離婚の可能性もあると腹をくくったはずなのに、いざその時が訪れると覚悟が大きく揺らぐ。
朋久と離れたくない。ずっとそばにいたい。
血の繋がりがあろうが彼の妹だろうが、それでもいい。自分の胸だけに留めておけば、廉太郎を口止めさえできれば、願いは叶うと心が叫ぶ。
それとは逆に、このままではいられないと頭の冷静な部分が冷たい決断を迫った。
バッグから封筒をふたつ取り出し、そのうちのいっぽうから離婚届を抜き取る。震える手でそれを広げ、朋久の前に差し出した。
「……どういう意味だ」
冷や水をかけられたと錯覚するほどの冷淡な声だった。
「離婚、してください」
唇が震えて、声がか細くなる。
「だから、その意味を聞いてるんだ。どうして離婚なんて話になる」
「それはその……」