S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

真実だけは明かせない。朋久も、彼の両親もどん底に突き落とすわけにはいかないから。


「……ほかに好きな人が」
「嘘をつくな」


間髪容れずに突っ込まれるが、なんとか切り返す。


「嘘じゃないの」
「菜乃が俺以外を好きになるなんてあり得ない」


その通りだ。菜乃花が朋久以外に心を揺らすわけがない。
でもその言葉を肯定していたら話ははじまらない。


「本当なの」
「誰だ」
「と、朋くんの知らない人」
「それじゃ今すぐここでその男に電話しろ」


架空の人物に連絡などできるはずもなく、無茶ぶりをされ大きく動揺する。


「そんなの無理だよ……」
「なんで。そんな男がいないからだろう?」
「ちがっ、いるの、本当に好きな人ができたのっ」
< 244 / 300 >

この作品をシェア

pagetop