S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
絶対に真実だけは明かせない意地があり、つい声を荒げる。
「それじゃ名前を言え」
「言えない」
首を大きく横に振ったが、適当に名前を作ればよかったかもしれない。咄嗟にそんな機転が利かないのかと情けなくなる。
「それで俺が納得するとでも?」
「だけど――きゃっ!」
突然視界が反転し、気づいたときには菜乃花はソファに押し倒されていた。
両手を拘束され、身動きが取れない。
「どうして若槻廉太郎と会っていた?」
「……え?」
朋久の口から出てくるはずのない名前にギクッとした。どうしてそれを知っているのだろう。
「充が絡んでるのか」
「ち、ちがっ」
「菜乃は俺だけのモノだろ。好きなヤツがほかにいるなんて絶対に許さない」