S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
菜乃花の手をソファに縫い留めるようにしながら、朋久は顔を近づけた。
――キスされる。
咄嗟に顔を背けたら朋久は首筋に吸いつき、菜乃花の着ているカットソーの中に手を忍ばせた。
「朋くんっ、やめて!」
解放されたほうの手で必死に抵抗する。
「やめろ? なんでだ。菜乃花は俺の妻じゃないか」
菜乃花だって、そのままでいたかった。朋久の妻で居続けたい。でも――。
「ダメッ、ダメなのっ。朋くん、お願い!」
足をばたつかせ、朋久の胸を片手で懸命に押した。
本当は菜乃花だって朋久を求めている。世界で一番大好きな人を拒絶しなければならないなんてあまりにも苦しくて、受け入れがたい理不尽。
いっそ朋久とふたり、地獄に落ちてしまおうか。
そんな想いに取りつかれる寸でのところでもがく。