S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「菜乃、頼む……」
菜乃花は意を決し、懇願する朋久の目を見つめ返した。
「じつは……」
ここ数週間のうちに菜乃花の身に起きた出来事をぽつぽつ話しだす。
廉太郎から、母親と朋久の父親が不倫関係にあったこと、それを承知のうえで菜乃花の両親が結婚したこと、そのとき母親は朋久の父の子どもを身籠っていて、それが菜乃花なのだと。
だから、朋久とは腹違いの兄妹だと廉太郎に聞かされたと、洗いざらい話した。
「おそらく若槻廉太郎は、鑑定書を真似てこれを偽装したんだろう。一番の欠陥は、鑑定結果にある」
「……どういうこと?」
「俺と菜乃花のサンプルだけで、ほぼ100%の精度の結果は出ない。せいぜい90%が限度だろう。今回だと俺の父親のサンプルがなければ、ここまでの精度になりようもないんだ」
仕事でこういった書類にも慣れている朋久だからこそ、それを見破れたのだろう。
菜乃花では、仰々しく作られた鑑定書だけで、それが正しいと信じてしまうから。