S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「それがどうしたっ」


もはや破れかぶれといった様子だ。廉太郎は鼻息を荒くし、肩を上下させる。


「私の父と菜乃の母親への名誉棄損罪も追加しなくてはなりません。なにしろ不倫をしていたなどと馬鹿げたでっちあげで、〝公然と〟ふたりの名誉を傷つけましたから。一対一の個室でなく残念でしたね」
「私文書偽造罪に侵入罪……、そのうえ名誉棄損?」


ぽつぽつとひとり言のように呟きながら、廉太郎が唇をわななかせる。毅然と事実を並べられ、もはや言い逃れも反論もできないだろう。

菜乃花は、次から次へと廉太郎を言い負かしていく朋久を眩しい想いで見つめていた。


「それと……」
「まだなにかあるのか」
「菜乃花は今回の一件で精神的な苦痛を強いられました。洗脳と言ってもいいような所業はなによりも許せない」


唇を噛みしめるように言った朋久は、膝の上に置いた手で拳を握っていた。微かに震えているのは、彼の怒りをなによりも表しているだろう。
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