S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「慰謝料を請求しますので、そのあたりも覚悟しておいてください」


朋久はそこでゆっくり立ち上がった。


「菜乃、行こう」


菜乃花の肩に優しく手を添え、立ち上がらせる。
障子を開け、朋久は廉太郎たちに振り返った。


「金輪際、菜乃に近づくな。菜乃を傷つけたら、次はこれだけでは済ませない。よく覚えておけ」


それまで丁寧だった朋久はガラッと口調を変え、なにをも寄せつけない怒気が漂う。

その言葉をかけられたわけでない菜乃花でも、背中に冷や水を浴びたような冷酷な声だった。

事実、廉太郎は血走った目を情けなく彷徨わせ、座布団から崩れるようにして後ろへ下がった。

菜乃花が一礼するより早く、朋久によって障子がぴしゃりと閉められる。関係を断ち切るかのごとく、強い意思を感じさせる音だった。

朋久に手を握られ、長い広縁を歩きはじめたら、バタバタと足音が近づいてくる。
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