S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「菜乃花! 待ってくれ!」


足を止めて振り返る。充が大慌てで菜乃花たちを追ってきた。


「悪かった。父さんがあんなことをしていたなんて……」


やはり充はなにも聞かされていなかったらしい。動揺は青ざめた表情からわかった。


「俺もいけなかったんだ。菜乃花が突然結婚したなんて聞いて、ひどく落ち込んだから。父さんはそれを見かねて、こんなバカなことを……」


眉根を寄せて苦々しく唇を噛みしめる。


「父さんから、菜乃花は京極さんと兄妹だから離婚するしかないと聞いて、俺もそれを鵜呑みにしてしまったんだ。それなら俺が菜乃花の全部を受け止めるって、自意識過剰もいいところだな」


廉太郎はひとり息子の充を昔から溺愛していた。それが度を超えて今回のような事態を引き起こしたのだろう。
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