S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「相手方に不利な時期、つまり在任中に解除した場合は損害賠償を支払う必要があります」
「損害賠償!?」
「残任期間中の報酬相当額になりますね。但し、やむを得ない事由があったときはこの限りではないとも規定していますから、お父様の場合はその事由と認められるでしょう」
認知症という医師の診断書があれば多くの場合は問題になることはないが、診断書の信ぴょう性や認知症の程度に疑義が生じた場合は、後々争いになる可能性もわずかながら内包していることも付け加える。
緊張しきっていた男性は、そこでようやく息をつき安心したようだった。
その後、解任の方法や手続きについての説明をし、エレベーター前で相談者を見送る。
「京極先生、お疲れ様でした」
頭を下げたのは同席していた野々原だ。
彼は入所して四年目の二十六歳。背はそれほど高くないが、くりっとした目元に愛嬌があり、アイドルでも通用するようなかわいらしい顔立ちをしている。
朋久の補佐として就くことが多く、多岐にわたる書類の作成技術は高く専門的な知識が豊富でコミュニケーション能力も高い。