S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「いやはや、忙しいところ突然悪いね」
「いえ、教授こそお忙しいでしょう」
藤谷にソファを勧めて、自分も向かいに腰を下ろす。
「直接ご連絡いただければ、ご足労いただかなくても私から伺いましたのに」
「いやいや、多忙を極める京極くんをお呼び立てするなんてとんでもない」
藤谷は右手を顔の前でひらりと振り、屈託のない笑みを浮かべた。
秘書が淹れてくれたお茶を勧め、揃って口をつける。
「それで今日はどのようなご用件でこちらへ?」
「ああ、それなんだかね」
藤谷はもそもそとお尻を動かして居住まいを正した。なにやらかしこまった様子だ。
「京極くんは三十二歳だったかな?」
「ええ、はい」
膝の上で揃えていた手を組み合わせて答える。
「そろそろ結婚を考える年頃じゃないかとね」
「結婚、ですか」