S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「まぁ突然結婚と言われたら返答に困って当然だろう。じつは下のカフェに綾美を待たせているんだ。休憩がてら、ちょっとコーヒーでもどうかね?」


なんと綾美まで同行させているとは。


「申し訳ありません、まだ仕事が残っておりますので」
「あまり根を詰め過ぎるのもよくない。ほどよく力を抜くことは大事だよ。ほら、行こう」


立ち上がった藤谷は、朋久の腕を強引に引き上げた。

お世話になった恩師の誘いをすげなく断るわけにもいかず、渋々従う。急ぎの案件や約束がないのが逆に恨めしい。
カフェで待っていた綾美は、朋久の姿を確認するとすぐさま目を逸らして頬を赤く染めた。


「わがままを申し上げてすみません」


先に謝られてしまえば、本音は言えない。「いえ、お久しぶりですね」と笑いかけ、彼女の向かいに座った。
注文したホットコーヒーはすぐに出され、藤谷が早速本題に切り込む。


「ほら、綾美、せっかく京極くんを連れてきたんだ。なにか話すことはないのか?」
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