S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「そう言われても……」


彼女も、朋久がここに顔を出すとは思っていなかったのかもしれない。父親にせっつかれ、半ば無理やり連れてこられたのではないか。


「綾美さんは今、どんなお仕事をされているんですか?」


困っている彼女を見かねて朋久から話題を振る。


「わ、私は大学の学生課で事務処理を担当しています」
「大学って」
「T大のだよ。京極くんの母校、私が教鞭を振っている学校さ」


朋久の質問に綾美が答える隙もなく、藤谷が口を挟む。


「そうなんですね」
「まじめで優秀な仕事ぶりだと、学校からも評判なんだ。京極くんの妻になったら献身的に支えられると親の私から太鼓判を押してもいいくらいさ」


押せ押せムードなのは娘ではなく藤谷のほう。昔から少々強引なタイプだと知ってはいたが、こういった形で強く迫られると閉口してしまう。
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