みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
***

 店内は、仕事帰りの一杯客でにぎわっていた。

「すいませ〜ん、とりあえず、生中ふたつ」
 席に着くなり、彼が大きな声でオーダー。

「食いもん、何、頼もっか?」

 カウンターの上にはびっしりと手書きのめにが貼られている。

「えっと」

 選びきれずに悩んでいると、店員さんが元気に「お待ちー」って言いながら、突き出しを持ってきた。

「とりま、乾杯」

 彼は美味しそうに泡がたっている生ビールのグラスを、わたしのグラスに合わせた。

「あれ? もしかして尾崎先生?」
 居酒屋の店員がわたしのほうを見て言った。

「えっ? なんだ、柴咲じゃない」

「わー、お久しぶりです」

「柴咲、あんた何やってんの? 高1で、居酒屋でバイト?」

「いや、友達の親がやってる店なんで。忙しいときだけヘルプに」
 柴咲はあわてたようすで弁解した。

「ま、いいか。わたし、もう柴咲の先生ってわけじゃないし」

「さすが尾崎ちゃん。そういうさばけたとこ、人気でしたよ」

「ふーん、いっちょ前にお世辞言うようになったんだ」

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