みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 彼はお通しの分葱のぬたをつつきながら、言った。
 
「あのさ。なんかくすぐったいからタメ口にしてくんない?」

「タメ口? あ、はい、いや、う、うん」

 あせあせと答えるわたしを見て、彼は面白そうな顔をした。

「なんでやめたの? あ、答えたくなかったらいいけど」

「ちょっと、体壊しちゃって」

「そうなんだ。じゃあ、今は?」

「図書館の臨時職員」

「ふーん。やっぱ、しっかりした仕事なんだね」

「真面目ってことしか能がないから。でも就活もしなきゃって思ってるところ」

「なんで? 図書館って安定してそうだけど?」

「正職員ならね。わたしはアルバイトだから」

 自分でも驚くほどスムーズに言葉が出てくる。

 なんでこんなに気負わずに会話できるんだろう?
 わたしよりだいぶ歳、若そうなのに、聞き上手なんだよね。この人。


< 21 / 132 >

この作品をシェア

pagetop