みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
「そうだ。この間、なんで傘貸してくれたの?」

「ああ、なんかさ。ほっとけなかったんだ。危うい感じがして」

「危うい?」

「うん。ホームに舞い戻って、線路に飛び込んじゃうんじゃないかって思って。で、思わず声をかけたんだ」

「飛び込……。ただ残業でへとへとに疲れてただけだったんだけど」

「なんだ。勘違いか。じゃあ濡れて損したな」

 そんなことを言いつつも、彼の顔には柔らかな笑みが広がっている。

 あっ、柴崎が思わず見惚れちゃうのもわかるな。
 本当にいい顔で笑う。

 こっちのことばかりじゃなく、彼のことも聞かなきゃ。

「で、あなたは何をしてるの。学生さん?」
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