みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
「いいよ。どうせ暇だし」

「おっ、やった。うれしい。プライベートで映画に行くの、すっごい久しぶりなんだ」

〝行ってもいい〟なんて、ずいぶん上から目線の発言だ。

 気を悪くしたかと心配したけれど、まったく気にしたそぶりもなく大洋は素直に喜んでくれた。

 こういう反応に触れると、こんなに純粋な子がどうやって厳しい世界を生き抜いているのだろうかと、いつも不思議に思ってしまう。


***
 
 待ち合わせは最寄り駅にあるショッピングモールに併設されたシネコンの前。

 2,3分遅れて到着すると、大洋はすでに来ていて、わたしを見つけて笑顔で手を振っている。

「やっぱ、仕事で来るのとはぜんぜん気分が違う」

 たまにお客さんに頼まれて映画館デートをすることもあるらしい。

 でも、自分が観たい映画じゃないし、気を遣わないといけないから、純粋に楽しめない、と、大洋。
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