みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 わたしも映画館に来るのは久しぶりだ。

 ロビーの大型スクリーンで絶え間なく流されている予告。
 上映開始を待つ人たちの、期待に満ちた表情。
 見終わった映画の話を夢中で話すカップル

 この雰囲気は、もちろん嫌いじゃない。

 大洋は「な、ポップコーン買おうぜ」というなり、もう列に向かって歩いている。

「ちょっと、待って」と言いながら、わたしもその後を追った。


 上映10分前になり、ようやく開場のコールがかかった。

「3番スクリーンは右手です」とチケット係のお姉さんが教えてくれる。

「あー、楽しみ」
 大洋は行儀悪くポップコーンをつまみながら、自分の席を探している。
 

 夕方の上映回は混むのかと思っていたけれど、それほどでもなかった。 
 
 同じ列には他の客がおらず、大きな傾斜がついているから前の客も見えず、大洋とふたりだけの、隔絶された空間にいるような錯覚に陥る。

 座席が大きくてよかった。
 腕が触れ合うんじゃないかと心配しなくてもいいから。


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