みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
「なんでこんなに予告多いのかな。早く始まってほしいよね」

 親密さを感じさせる仕草で、半身をこちらに寄せて、耳のそばに顔を近づけて大洋がささやく。 
 
 頬にかかるほんのりと温かい吐息を意識しすぎないように、わたしはドリンクに手を伸ばした。

 すると大洋はわたしの手からドリンクを奪いとった。

「やっぱ、それの方が良かった。一口ちょーだい」
 そして、こっちの返事を待たずにカップに口をつけた。

 あっ、と声を上げそうになった。

 間接キスでどきどきするなんて意識しすぎだと、自分でもおかしくなる。

 けれど、頬が熱を持ってきた。 

 嫌だ。こんなことで赤くなっているところを見られたくない。

 そう思っていたら、幸い、そのタイミングで明かりは消え、場内は暗闇におおわれた。

「やっと、始まるな」

 紙コップを返し、大洋は椅子に座りなおして、正面を向いた。

 わたしはスクリーンの明かりが反射している大洋の整った横顔を盗み見ずにはいられなかった。
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