みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 きついアルコールのにおい。
 冷えた身体とは対照的に吐息が熱い。

「美羽さん……助けてよ」
 大洋はわたしの顎に手をかけ、口づけようと顔を自分のほうに向けた。

「ちょっと、やめて」
 そう言って抵抗したけれど、男の力にはかなわない。

 頬を両手で挟まれ、すぐに唇を押しつけられた。

「……!」

 白状すれば、何度も夢に見ていた。
 大洋とのキスを。

 でも、今は何より嫌悪感が先に立った。

 わたしは思わず、大洋の唇に噛みついた。
「いっ」

 彼が怯んだ隙に、力任せに突きとばし、キッチンへと逃げ、にらみつけた。

 
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