みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 手の甲で自分の唇を乱暴にぬぐう大洋。

 その手についた血を見て、我に返ったようだ。

「ご、ごめん、おれ……」
 大洋はうなだれたまま、かすれた声で言った。

「な、なんなの。まったく連絡してこないと思ったら、夜中に急に来て、いきなり」

「本当に悪かったよ。ものすごくショックなことがあって。ただ、美羽さんにどうしても会いたかっただけだったのに。なんで、おれ、こんなこと……」

 そのとき、わたしはすっかり頭に血が上っていた。

 見るからに悩みを抱えている大洋の話を聞こうという気持ちはこれっぽっちも浮かんでこなかった。

 どこまで人の気持ちをもてあそべば気がすむんだ、という自分勝手な怒りに駆られていた。

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