みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 大洋にはなんの責任もないことなのに。
 わたしが勝手に好きになっただけなのに。
 それなのに……

 結局、大洋もただのふしだらな男なんだと。

 普段なら心をかすめもしないことがわたしの心のすべてを占めていた。

「人をばかにして」
 テーブルに手をついて、わたしは押し殺した声で言った。

「これだから、あんたみたいな仕事してる人間は信用できないのよ」

 大洋の顔がこわばった。
 一瞬で、空気が凍りついた。

 しまった、と思ったが後の祭りだ。
 しばらく沈黙が続いた。

 先に声を発したのは大洋だった。下を向いたまま、ふっと自嘲気味に声をもらした。
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