みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
***

 大洋の住むアパートは図書館のあるF町から一駅のところにあった。
 スマホの地図で検索すると、駅からかなり遠い。

 坂道沿いの閑散とした駅前商店街を抜け、住宅街に入った。
 どこからともなく魚を焼く香ばしい匂いが漂ってくる。
 それで夕食時だと気づいたけれど、空腹はまったく感じない。

 ただ、大洋がいてくれますように、会ってくれますようにとそればかり願っていた。

 散々道に迷った末、どうにか大洋のアパートを探し当てた。

 木造二階建ての、かなり年期の入った建物。

 メモには103号室と……
 あった。
 その部屋には「佐伯」と書かれた手書きの表札が貼られていた。

 遠慮がちにドアを2回ノックした。
 応答はない。
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