みうとうみ               ~運命の出会いは突然に~
 もう少し強めに叩いた。やはり応答はない。
 やっぱり留守か。

 でも帰る気はまったくなかった。
 
 帰ってくるまで待っていようと思い、ドアの前で缶コーヒーをポケットから取り出す。
 必死で歩いてきたせいか、緊張のせいかわからないけれど、喉がとても乾いている。

 プルタブを上げる寸前、ドアの磨りガラスの向こうで人影が動いたように見えた。

 わたしは急いでドアに近づき、中まで聞こえるように大きな声で言った。

「大洋。わたし、美羽」

 たしかに中に人がいる。声は届くはずだ。

「大洋、聞こえる? わたし、どうしても謝りたくて」

 中の人が動く気配はなかったが、わたしは続けた。
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