激情に目覚めた御曹司は、政略花嫁を息もつけぬほどの愛で満たす

森野家は厳しく外泊は許されなかったが、成人して多少帰宅が遅くなる時は颯真が家まで送って来ていたのも見たことがある。

淡い初恋が胸に燻っていたもののお似合いだなと思っていたし、当然そのまま結婚するものだと疑ってもいなかった。

なぜ姉は婚約発表直前で姿を消してしまったのか。

自分だけには話してほしかった。頼りない妹だけど、それでも話くらい聞けたのに。そう心の中で姉に問いかける日々。


結局、弥生の消息は掴めず、その年の夏には代わりに千花が颯真と婚約することになったと父から淡々と告げられた。

当時付き合っていた彼氏とは別れさせられ、エスカレーター式に行けるはずだった共学の大学ではなく、実家から通える距離の女子大に進路を変更させられた。

そこでは栄養学を専攻するよう命じられ、料理教室にも通わされた。

父いわく、婚約期間の4年の間に余計な虫をつけずに花嫁修業を積み、大学卒業と同時に披露宴を行い籍を入れるのだという。

保育士になりたいという夢があった千花は、付属大学の幼児教育学科に進学がしたいと願い出たが、父は頑として首を縦に振らなかった。

ただ夫を支える妻として料理を勉強し、卒業したら働くことなく家庭に入れという宣告がなされた。

こうして千花の大学卒業を待って、この春、颯真と千花は結婚するに至ったのである。


< 15 / 162 >

この作品をシェア

pagetop