かぐや夢の如し

逃亡生活の開始

さて、目立たないように林に降りたはよいが今の私じゃ動きにくい

そして、逃亡生活とはどうすれば良いのだろう?
拠り所でも探せばいいのか?
それとも当分の金の工面か?
金に関しては出せばいいだけだから心配はないが
「おい、あんちゃん」
はて私が料理なんぞ出来るだろうか?

「聞こえてんのか?身包み置いてけや」
いやそもそも着付けからだな
着付けは見てきたから案外できそうな気がする…!気がするだけだが!
「おい!あんた!!」

誰かに肩を強く引かれ、強制的に後ろを向かされる。
「妾か?妾に言っていたのか?」

自分より上背もあって幾分もでかい男は先程放たれた妾の言葉に何かが気に食わなかったらしい。
顔を真っ赤にしている

「あんた以外に誰がいんだよ。
痛い目見たくなきゃさっさと上等なお着物置いていきな!!」
初対面のくせに生意気である
いや心を許してる相手でもこれは許されるものでもないが
まるで追い剥ぎである。







刹那頬に衝撃が走った
反動で地面と仲良く向かい合ったのは言うまでもないだろう
「あんたがグズグズしてっから綺麗な顔に傷ができちまったかもなあ!?」

こいつほんま…
殴られた事により、元々目立ってはいたがこれで決定的に視線を集めることになった
恥ずかしいことこの上ない
怪訝に噂されてるんだろうな
反動で地面と衝突事故しそうになった際本能的に出した手のひらが擦りむいて頬と共に熱を帯びている。
軽症ですぐに治るとはいえ痛いものは痛いのだ

「人が自分の思い通りにならぬと思ったら直ぐに手をあげるのは愚策もいいとこじゃぞ!」

「あんだと!!?」

「まぁまぁ落ち着いて、何があったか知らんけどさ」
薄藍色と白の波のような模様の羽織を着ている殴ってきた男より小さい

「ちっ、壬生狼如きがっ…!」
壬生狼…?
どういう意味での例えなのか
今の私には分からないし興味もない。

「これ以上の騒ぎを起こすようなら実力行使も(いと)わないけど?」
あとから割り込んできた方の男は刀に手をかけている。

「調子に乗れるのも今だけだぞ!」
流石に死にたくはないらしい
巨漢の男は脱兎のごとく走り去っていった。

自弱い立場相手に暴力を振るうだけでなく、自分と対等又は上のやつが出てくれば消える
何とも浅ましいではないだろうか「さて、お嬢さんその怪我してる状態で行かせるのもなんだし、うちよって手当でもされて行きなよ」
「すぐに治るから問題ない」

助けを求めた訳ではないがあれ以上の騒ぎになっておれば困窮(こんきゅう)していただろう、だが助けられたのは事実ではあった。
だからといってまだ迷惑をかける訳には行かなかった

「軽傷とはいえ女性が怪我してて放置、なんて外聞が悪いだろ?さあ行くぞ!」

「あ、おい!!ちょっと…」
< 3 / 8 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop