snowscape~彼と彼女の事情~
しかし、このカラオケというものが俺はどうも好きになれない
歌を聞くのは好きだが、それを自分で歌おうとはこれっぽっちも思わない。
楽しそうに部屋決めをしている3人の後ろ姿を見ていると、まだ時間がかかりそうだなと灰皿の近くにあったUFOキャッチャーにお金を入れた。
別に取るもんなんかないんだけど、暇つぶしにはなりそうだと特に狙うこともなく進める
……と言っても、
取れたことはめったにない俺はサイフからどんどん小銭がなくなっていく……
「ったく、つまんねぇ……」
最後の100円だと思いながらサイフからだし狙いもしないでボタンを押すと、ぬいぐるみが引っ掛かりそれがユラユラしながら落ちそうになっている。
「あーーーっ!!!」
「うぉっ!!なんだよ……」
ぬいぐるみが落ちたのか確認する前に背後からの大きい声で俺は慌てて後ろを振り返った。
「すっごい~!!取れたぁ!!!」
そこには、お金をこの機械に貯金していた俺よりも明らかに大喜びしている女の子がいる。
「あっ、あっ、ごめんなさい」
「え?いや、いいよ」
それはあまりの慌てぶりで、俺は機械の方に視線を戻すと白いクマが下に落ちていてそれを手に取った。
可愛くもない小さい白いクマ。
「どうした?」
大きな声を出したからなのか、顔を赤く染めて俺の後ろに背後霊のように突っ立ってる友里がいる。
「いや、あの、二人が先行ってるから旬サンを呼んできてって……」
今にも消えてしまいそうな声を耳を傾けて聞くと「わかった」と加えていたタバコを灰皿に押し付けた。