snowscape~彼と彼女の事情~
「よし、行くか」
取った白クマのぬいぐるみをコートのポケットに入れると俺は歩き始めた。
「あ、はい」
俺が歩きだすと、本当に背後霊のように後ろからチョコチョコと着いてくる。
「どこの部屋?」
「あ、17番の部屋です」
足を止めて振り返れば、同じように足を止めて、俺を見上げている。
「なんか、俺怖いかな?」
「えっ?あ、いや、そんなことないです」
いや、そんな微妙な言葉の詰まり方が不自然だろ……
なんて思ったが、本当に嫌われてそうな気がして
これ以上深く突っ込むのは止めようとひたすら歩き、17番の部屋の前に着いた俺はドアを開けた。
「おい、旬っ!!おせ~よ」
「わりぃ~」
なんだか距離の近い二人を見ながら、俺は向いの席に腰を下ろすと、後ろから着いてきた背後霊の女の子がドアの前で突っ立っていた。
「つ~か、座らないの?」
「友里、なにやってんの?」
俺の言葉の後に、亜紀が続くと「座るよ」と俺の横にかなり距離を開けて腰を下ろした。
別にその距離がどうってことじゃない。
俺は別に女を求めているわけでもない。
だけど、この微妙な距離が、
俺、完璧嫌われてんな……と、友里の行動を見ながら笑いたくなるのを堪えるのに必死だった。