snowscape~彼と彼女の事情~
「おっ!!友里チャンが歌います!!」
「友里~っ!!!」
曲が流れだしてやっと俺たちの存在を思い出したかのように隼人と亜紀が叫び出した。
「やだっ……やめてよ」
恥ずかしそうに、俯くと咄嗟に体ごと画面に向けてる友里は俺からは後ろ姿だけしか視界に入らない。
その後ろ姿を見ていると俺が選曲した歌はハードルが高かったかな?
と思ってしまうくらいどう考えてもその小さな体からは声が出るとは思えない。
それでもそれを受け入れたってことはもしかしたら、歌いこなすのかもしれないと思うと楽しみにしている自分がいる。
そして何よりもその曲は俺の一番大好きなバラードだ
間奏が入るとようやく隼人と亜紀は口を紡ぎみんながいっせいに画面に集中した
そんな中、俺はまたタバコに手を伸ばすとそれを加えては小さく吸い込み静かに宙に向かって吐き出した
このクソ狭い空間はやはり好きにはなれないが心地のいい音楽が流れると、少しだけ悪くないかも?なんて思っている自分もいる
歌を唄うことが嫌いな俺は、聞くことは凄く好きで音楽がないと全く眠れないということは誰にも知られていない俺だけの秘密
そして、友里が歌いだすと同時に静かに目を瞑った。