snowscape~彼と彼女の事情~
いや、俺も自分のことよく分からないんだけど……
そう言っていいものかと考えている間に茉莉は続けて話し始めた。
「いきなり、ジムに通うかと言いだしたかと思えば、カラオケにいるとか……」
「つーかさ、俺の行動をなんで監視されるようなマネしなきゃいけないの?」
「えっ?」
「だから、俺の自由までお前に奪われるのが嫌なんだよ」
「旬っ……」
泣いているのだろう……
電話越しにさえはっきりと伝わってくるそれは、演技かと思われるほどだ。
だけど、俺には茉莉が泣いてようと関係なんてないのだ。
「だって、あたし達恋人同士でしょ?」
今時の恋人たちは、監視されることも自由を奪うことも当たり前だというのか?
もしも、そんな決まりが存在するのであれば、俺は一生女なんてものを作らないだろう。
「あのさ、俺はそうゆうの嫌なんだよ、そうゆ~のを望むなら俺は無理だから」
“じゃあな”と最後に言いながら通話ボタンに手をかけようとした時に“待って!!”と聞こえた気がしたが、俺はそのまま押し再びポケットに突っ込んだ。
そもそも、携帯をいうものが俺には必要なものなのかな?と考えた日でもあり
いや、必要ねぇ~なと考えがまとまるまでそう時間はかからなかった。
「おい!!旬っ!!!」
みんなのいる部屋を通過しては、トイレに向かおうとしている時、その背後から聞こえた声に俺の足は止まっていて
振り返ると同時に「なんだよ」とそう呟くと、隼人が苦笑いしている。
「だからなに?」
再びトイレはと足を進めると隼人は小走りに駆け寄ってきた。
「ツレしょんかよ、うぜ~な」
にこにこしながら隣で用を足している隼人が俺に向かってそう言い放つのを聞いては、そのまま言葉を返してやるよと心の中で呟きながら大きなため息を吐いた。