snowscape~彼と彼女の事情~
「茉莉チャン、ご立腹?」
さっさとトイレを出ると再び小走りに駆け寄ってくる隼人が俺の背中に向かって話しかけている。
いや、間違いなくご立腹なのは俺の方で……
そもそも、この発端は間違いなく後ろから着いてくる相変わらずのおちゃらけ野郎のせいで……
「つーか、何時まで?俺ねみ~んだけど」
「はっ?お前は友里チャンお気にじゃね~の?」
そんなにもびっくりしたのであろうか、俺の前に出ては足を止めさせる隼人にため息をぶつけた。
「あのさ、俺が気にいる?今までそんなことあるかよ……」
「だって、旬……いつもと違ったじゃね~かよ!あんな旬を俺は見たことない」
「あのなぁ……」
「お願いっ!!友里チャンと仲良くなってよ!!したらこうして遊べるじゃんか」
“お前たちが二人の世界に入っているからだ!!”と言ってやろうかと思ったのに、後者の言葉が俺の口からそれを出させることをもはや止めていた。
むしろ、コイツはまた俺にこんな状況を設定しようとしているのだから……
「俺、このまま帰っていい?」
「はっ?」
「あっ、それとあの友里だっけ?携帯解約するから繋がらないと思うと伝えて!」
「はっ?意味わかんね~よ!!」
「携帯、必要ないこと判明したから」
なんせ、プレミアな女の子だからかけてくることはないだろうとは思ったが嘘つきだと思われたらなんとなく後味が悪いなと、
念のためそう伝えサイフから一万円札を一枚取り出すと隼人に差し出した。