snowscape~彼と彼女の事情~
「いや、帰ったら困るって……」


「つーかよ、ねみ~って……」


掴まれた肩を「つまんね~んだよ」と振り払うと、隼人の顔が一瞬でひきつりながらにも笑顔を見せていて、その瞳は俺を映し出していない。



「すみません、あたしつまんない女ですよね」


「あっ、いや!!友里チャンっ、違うって……」


「ごめんなさい、あたしのせいで……」



その言葉に、ゆっくりと振り返ると、今にも消えてしまいそうなのは声だけではなく、もともと小さな友里も、ますます小さく見え消えてしまいそうだった。



やっべ……


そんな風に一瞬で思った自分にも、なんの気持ちの変化だ?なんてびっくりしているのだけど、


俺より遥かに気まずそうに、そしてびっくりしているのは目の前にいる男で……



一生懸命言葉を探しているのか、口は変な動きをみせているのに言葉を発していない様子だった。



そして、いつもの俺なら構わず『そうゆうことだから』とその場を去るはずなのに、言葉も足も動こうとはしない。



もちろん、いつもの自分が出てこない俺はこうゆう時に上手く状況を交わすような言葉などは持ち合わせてはいないのだ。



「友里ごめん、違うんだ」


気がついたら、下を向いていた友里の頭をポンポンと叩いていて俺は顔を覗き込んでいた。



「だって……」



「女が、電話しつこくてさ、こんな状況で楽しくできないなと思って」



「えっ?」


「だから……あのさ……」



「そう!そうなんだよ!!友里チャン、旬の女すげ~んだよ!!だからうるさく言われたらしく不機嫌だったから俺が色々とギャグ言って楽しませていたんだよ、したらそれが逆にうざかったらしくて、あの暴言……」



「参ったよ、俺も完敗だぜっ!!」


俺の言葉を塞ぐようにしては一人で話し続けていた隼人にこの時ばかりは心の中で「わりぃ~な」と呟いた。













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