snowscape~彼と彼女の事情~
だが、そんな隼人への恩は一瞬で却下された
気がつけば、部屋の中へと急いで入っていく隼人の後ろ姿
目の前には下を向き続けている小さな友里……
そして、その小さな女の子の前に呆然と突っ立っている俺
むしろ、なんで俺がこうして色々と頭をフル回転させなくてはいけない状況へとなっているのかさ良く分からない。
そんな俺たちを不思議そうに見つめながら、店員は隼人と亜紀のいる部屋に注文したのであろうお酒を持っていく……
それはおそらく、ノリノリで歌っている亜紀のものであろう
一瞬だけ、開いたドアから漏れた亜紀の声が聞こえてきて“本当にノーテン気な女だ”と肩を落とした。
「あの……」
「んっ?」
その瞬間に、お酒を運び終えた店員が出てきていて、俺を見つめる
その視線は間違いなく俺が悪者扱いだ
そりゃそうだ、部屋から2人で出ていて、女の子が俯いていりゃ俺が責め立てているように映るのだろう
「中、入ろうっ」
友里の腕をひっぱり、ドアのノブに手をかけると「待って!!」と大きな声を張り上げ俺の手を振り払った
「えっ?」
「だって、彼女サン怒ってるんでしょ?」
「ああ……」
「帰らなくて平気なの?」
「いや、俺は女を気にしているんじゃないんだよ、仕事のこと」
そう言うと、再び腕を掴み隼人と亜紀のいる部屋へと足を踏み込んだが、その瞬間友里の足が止まった。