snowscape~彼と彼女の事情~
「今日はサンキューな!!それより友里チャンと連絡取ってみれば?」
「ああ、考えとく」
親切に家の前で横づけしてくれた隼人に「わりぃ~な」と言ってみれば「なんか気持ちわりぃ~よ」と返された。
車から降りると、そこはまた別世界にいるような気がする。
車の中で襲ってきた睡魔も、外へ一歩踏み出せば吹っ飛んでしまう寒さだ
「ああ、目が冴えるわ」
フォ~ンーーー!!!と隼人のやかましいクラクションが鳴り響いて車が遠くなって行くのを見て、近所迷惑だと思った。
はっ……?
「う~さみぃ~」と言いながら玄間に近づけば、なんだかその前に座り込んでる奴がいる。
その正体なんてものは、顔を覗かなくたって分かってしまうから怖い
そして、こんな寒さの中待ち続けていたのかと思うと、やっぱり女ってもんは面倒くさいと思ってしまう。
「しゅんっ!!!!!」
おもいっきり俺に抱きついてきた茉莉は鼻をクスンと鳴らして、顔を胸に埋めた
「寒かった、寂しかった……」
小さく呟く茉莉の体を放すように掴むと、そこからは温かい体温が感じられる
いつから待ってたんだよ?と聞いてやろうと思った俺もいたのに、その体温を感じた瞬間に鼻で笑ってしまった。
なんでこう女ってもんは、いやらしい考えを持つのだろうか。
いっそのこと“心配だから来ちゃって着いたところ”と言ってくれた方がまだ許せるのに……
「遅かったね、早く開けて……」
黙ってポケットから鍵を取り出すと、茉莉が早くと言わんばかりにそれを奪いまるで自分の家のように玄間へと足を踏み入れた。