snowscape~彼と彼女の事情~
茉莉の後に続いて部屋に入る俺は一瞬だけ自分の家じゃないような錯覚に陥ってしまう。
淡々と歩きながら、真っ黒なソファーに腰を下ろすと茉莉は無言で、俺を見つめていた。
「誰といたの?」
「隼人」
「あとは……?」
「ん、女の子二人」
その瞬間、茉莉の大きな目はさらにでかくなり、そして明らかに睨んでいる。
「なんで?」
その言葉に“関係ないだろ”と返してしまいたかったが
間違いなく面倒になることを想定して「隼人に誘われたから行った」と真実を告げ、俺は無造作にコートを脱ぎ棄てお風呂場へと向かった。
シャワーを浴びながら、浮かんでくるのは怒っている茉莉の顔ではなく、なぜだか友里の顔
「連絡してもいいですか?」と帰り際に下を向きながら言った友里に“地面に問いかけているのか?”と言ってしまいそうになったが、
「うん、してな」と勝手に口が動いていた。
なぜだろう?
女という生き物は俺の中で汚らわしい生き物なはずなのに
なのに、俺は友里だけはその分類に入れたくないと思ってしまっている。
自分の体から滴り落ちていくシャワーのお湯を見つめながら、俺は自然と大きなため息を吐いた。