snowscape~彼と彼女の事情~
『旬は、大きくなったら何になるの?』
『オレは、母ちゃんとけっこんするんだ』
『あら~旬ったら~♪』
『いいでしょ?』
『そうね、旬のおよめさんにしてね』
あれはまだ、俺は4つか5つの頃だっただろうか……
幼稚園の帰りに、お袋に聞かれた質問
俺はあの時は、絶対に母ちゃんと結婚すると信じてやまなかった。
そんな俺たちの会話を隼人のお袋サンは隼人としっかり手を繋ぎながら微笑ましそうに聞いていた。
その時の隼人のお袋サンの笑顔が今でも忘れられない。
『隼人は大きくなったら何になるの?』
俺の隣で、手をひかれていた隼人は『スーパーマン』と答えていたっけ。
俺は、あの時幼心に隼人には勝てそうにもないな……なんて思っていた。
いつも、幼稚園の帰りには公園で暗くなるまで遊び
雨の日は、俺の家か隼人の家で遊ぶ
毎日、俺たちの姿を見ながら、ほほ笑む俺のお袋と隼人のお袋サン
俺が隼人と仲がいいように、お袋たちもとても仲がよくて……
だけど、そんな日々は続かなかったな
『なぁ、旬?』
『なんだ?』
『オレの父ちゃんと旬の母ちゃんが仲良しになっちゃったんだって』
『それっていけないことなの?』
『いけないことみたいだよ』
そう、幼稚園から帰るバスの中で聞かされた隼人の言葉以来……
俺たちは幼稚園が終わってから遊ぶことはなくなっていた。