snowscape~彼と彼女の事情~
ーーブルルルルル--
お風呂から上がった瞬間部屋に入るなり、ベッドの上でバイブ音と共にランプが点滅している。
「……んだよ」
ーー隼人ーー
その電話で、もうそんな時間かと携帯の右上に出ている時間を見るなり通話ボタンを押した。
「あ?なに?」
「もしもし?」
「なに?」
「なに?って、7時半なんですけど……」
「わりぃ~今風呂出たところ、ちょっと待って」
「あ、分かった」
隼人の車なのだろう、エンジン音が家の前で鳴り響いている。
「ったく、一息つく暇もねぇ……」
現場から運転させられて、渋滞に巻き込まれ、風呂でやっとスッキリしたかと思えばこの様だ。
ドライヤーを手に取ると、ざっと髪を拭きながら仕上げにワックスをつけた。
ーーブルルルルーー
ジーパンに足を入れようとした時、また静かな部屋にバイブ音が鳴り響く。
「……んだよ!!今着替えてっから!!」
コイツはそんなに俺をイライラさせたいのかと思いながら不機嫌そうに言うと、言い返してくる気配もない。
「後少しだから待って」
そう言いながら切ろうとすると「何が?」と聞こえた声に俺は画面に目をやった。
はっ……!?
その画面に映っている文字は一瞬で俺の肩を落とした。
「旬、どこ行くの?」
やっちまった……
まさか電話の相手が茉莉だとは思いもせず、隼人だと思って確認しなかった俺がアホだった。
「もしもし?ジムは?」
「あ、今から出る」
「えっ?誰が待ってるの?ジム行くんだよね?」
「隼人と行くんだよ、で、今待たせてんの!」
「ふ~ん、そう」
「そう、じゃあな」
携帯をベッドの上に放り投げると、穿こうとしていたジーパンに足を入れ近くにあったロンTとコートを羽織り
携帯とタバコとサイフをポケットに入れると隼人の元へ急いだ。