【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた

碧人さんは私に特別な気持ちなんてない。 そう自分に言い聞かせるように心の中で唱えたら、胸がずきりと痛んだ。

着替えが終わって数分後、温めたお粥を運んで碧人さんが部屋に入って来る。

まだ熱でふらふらだったけれどゆっくり起き上がると、碧人さんはスプーンでお粥をすくってふうふうと息を吹きかけた。

思わずその唇をがん見してしまう。  碧人さんの薄い唇…。薄い唇の人は薄情だっていうけれど、すごく柔らかかった。

そんな事を考えているとばちりと彼と目が合ってしまい、思わず逸らす。  …ね、熱がまた上がりそう!!

碧人さんはそんな様子にも気づかず、スプーンですくい上げたお粥を私の口元へ運ぼうとする。

「ちょ…自分で食べれますってばあ……」

「きちんと食べるの確認しないと食べなそうだろう。 いいから、口を開けろ。
少しは食べないと薬が飲めない」

「もぉ~~…ハイハイわかりましたよ。 あ~~」

真白が作り置きをしておいたお粥は、味気がなかったけれど温かい味がした。

もぐもぐと口を動かすと、碧人さんは満足げに顔を綻ばせていた。 その顔を見て、また胸がキュンと音を立てる。

…って!!!何を考えているのよ!!

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