【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
お粥を少し食べさせられた後薬を飲まされててっきり部屋に戻るかと思いきや、碧人さんはそのまま床に座り込んで小説を開いた。
外国の作家さんだろうか。私にはタイトルから小難しそうで読む気にはならない。
「家で仕事をする為に帰ってきたんじゃないの…?」
「少し位部屋で本を読んでゆっくりするのもいいだろう。俺にも安らぎが必要だ」
桃菜と一緒で碧人さんの安らぎになるの? 布団にもぐりながらジッと彼を見つめると、ハッとしたように顔を上げた。
彼の視線がカーテンの方へ向かう。
「すまんな。暗い方がいいならカーテンを閉めるけど」
「ううん、いいの。 今日は天気が良くってぽかぽかしてるから温かい」
「そうか、それならば良かった」
天気が良かったのにも、今気が付いた。
けれどこんなにぽかぽかと心が温かくなるのは、横で碧人さんが静かに小説を読んでいるせいかもしれない。
そこに言葉は無くとも、ただ側にいてくれるだけでこんなに安心した気持ちになれるんだ。
うとうととし始めて静かに寝息を立て始めると、また夢を見始めた。