【完】ひとつ屋根の下、気がつけばあなたがいた
「父さん、母さん、姉ちゃんが帰って来たよ-!」
玄関で拓斗がそう叫ぶと、リビングの扉が乱暴に開く。
思わず碧人さんの後ろに隠れると、彼は私の左手をぎゅっと握った。
「桃菜…!」
それだけ時間が流れていた。
私にも拓斗にも、勿論父にもだ。
父の黒髪には僅かに白髪が混じり、顔の皺も増えていたようだ。
’…お父さん、歳取ったな…’ ぺこりと頭を下げると、父はジッと私の顔を見つめた。
驚いたのは、その父の目に涙が浮かんでいた事だった。
「お、お邪魔します……」
「何がお邪魔しますだ。ここはお前の家じゃないか…」
涙声で父がそう言ったから、胸がぎゅっと締め付けられるような気持ちになる。
拓斗がにこにこと笑っていて「父さんったら照れちゃって」と私へと耳打ちする。